『プロハ夢手帳』を作って感じた、読者の大切さ。

編集記

僕が編集した『プロハ夢手帳』が2018年1月に発売になりました。
今回はこの本の企画の経緯から、編集を経て考えたことについてお話ししていきたいと思います。

2冊目企画の経緯

『プロハ夢手帳』とは、TOKYO PRODUCERS HOUSE(トーキョープロデューサーズハウス、以下プロハ)のメンバーのインタビュー構成されたインタビューブックに、ワークシートやメモを追加したワークブックです。

TOKYO PRODUCERS HOUSE(以下プロハ)の本というのは今回で2冊目になります。

なぜこの2冊の本を出すことになったのでしょうか。

好評で売り切れた前作

前回の『PRODUCERS 2016』が刊行されたのは2016年の7月でした。
こちらは出版第一号ということもあり、シンプルなインタビューブックでした。

当時、プロハに在籍していたメンバー達に、当時の仕事のこととか当時の活動を聞いて、メンバー同士がお互いのことをより詳しく知ることが目的でした。

部数は数百部だったのですが、プロハに来た人が来たついでに購入していってくれたこともあり、1ヶ月程度で売り切れてしまいました。
現在はアマゾンのみで販売になっています。

2作目は読者像を明確にした

それから2年が経ち、2冊目を出すからにはそれとは違うものにしようということになりました。
前回よりも進歩を求め、「読者のために、何が必要か」ということを第一に考えました。

最初に考えたのは、「プロハに来るメンバーやお客さんって、どういう感じの人が多いんだろう」というクエスチョンでした。
会員メンバーはだいたい30歳前後の人が一番多い。いっぽう、お客さんで言うとそれと年齢層とは少し違って、25歳とか大学生が多いな、ということがわかりました。これは、プロハの公開イベントに来る人を見てみても、学生とか社会人の若手の方が多かったためです。

では、彼らに対して、編集者として、本をつくる仕事として、何ができるだろうか。
そこが、2冊目の本をつくる出発点になりました。

1冊目と異なり、単純にメンバーを順に紹介するわけではなく、「読んだ人が成長できる」「自己啓発というテーマに正面から向き合う」ということを第一のテーマに考えました。

その場合、通常の本を書いてもインパクトが弱いだろうな、と感じました。
世の中にはたくさんの自己啓発本が出ているわけですから、このプロハでやるぶんの特別な理由が必要でした。

せっかくなら、普通の商業出版の単行本ではできないようなことをやりたい

本を読んだ人が学びを得て、そこから実際にアクションを始めることができる。
アクションの入り口をつくることで、その人が変わるきっかけを与えることができる。
そんな本ができないだろうか。

そして考えたのが「手帳」というコンセプトでした。

なぜ、手帳なのか

紙の本にしかできない、手帳のデザイン。A4サイズにして、本の外側をノート部分にする。
手帳と言ってもカレンダー帳ではなく、インタビューを選んだその余白に実際にメモをかけるためのスペースが設けられている、それを手帳と呼ぶことにしました。

インタビューを読んだ後に、感じたことを手帳部分に直接書きこむことで、能動的な読書ができる。

さらに、読んだ後に「ワークシート」を書いてもらってそのワークシートについてさらに考察を深めてもらう。

読んだ後は、書き込んだものをプロハに持ってきてもらう。そして、書いたものを意識的に見せてもらい、シェアしてもらう。

その様子を次の読者に広げる、ひいては考えたこと書いたことが次のプロハの資産を作っていく。

こんな感じで、単に本を読むだけではなく、その先まで設計した本を考えました。

最初に参考にしたのが、ユニクロ柳井正社長の『経営者になるためのノート』でした。
こちらは、普通の単行本のような文章が書かれているのですが、その本文の周りが全てノートになっているものでした。

これが結構売れているのを見て「こんな本の作り方があるのか」と驚いたと同時に、なんて面白い本なのだと感じたのです。
こちらは縦書き一段でしたが、プロハ夢手帳は縦書き三段にしようということで、中心のデザインが決まりました。

インタビューには、経営者・事業主の方12人に出ていただこうと考えました。
学生〜25歳前後の読者学生に向けて、実際のアクションのための言葉をいただく。

インタビューするテーマは「自分が25歳のときに、欲しかった言葉」としました。

ページ割りを考えてみると、インタビュ一1人あたり5ページが限界でした。
その中で最大限メッセージを詰め込むために、取材も工夫しました。

最大のテーマは、著者との近さ

柳井社長のような上の雲の上の存在の人の言葉を得るのもいいのですが、身近な起業家の話を聞くことも同じくらい大切なのではないかと思っています。
身近な企業家や、会いに行ける起業家がいる。その言葉を得ることで、すぐにやってみようと思えるからです。

本にするからには、その身近さを活かせるものを作りたいと思いました。

年齢が5歳ぐらい違って、プロハに行けば会えるくらいの距離感。
その距離の近さは、すごく大事だと思いました。

距離の近さとか著者の誰かに会える可能性とか、リアルイベントの参加のしやすさとかは、本を買って読む上で大きな要素になってくるもの。

イベントがあれば直で会える・直で話せるし、聞きたかったことも聞ける。
それぐらいの距離にいることが、本を使って学ぶうえで大事になってくると思っていたのです。

手に取りやすいデザインを目指して

ただ、いくら身近とはいっても、経営者のインタビューブックとすると初見では重い印象を持たれてしまいます。

デザイン上は、その年代が手に取りやすいデザインにしたいと思いました。

前回同様、女性メンバーのモデルを表紙にして、手に取りやすい印象を与えたいと考えました。
手に取ってもらえないと、本の内容を知ってもらえないわけですから、当然です。

最初は制作コストの低いモノクロの本を考えていましたが、フルカラーにすることでより読者が手に取りやすい本にできるのではないかということで、単価をあげてフルカラーにしました。

次に、写真の撮影場所については悩みました。
前作同様プロハの内装の中で撮ると、ほぼ同じ写真になり新鮮さがないためです。

カバーはお金をかけるべきだと考えているので、専用のスタジオかイラストレーションを考えました。

さらに当時、モデルの阿部さんはバリに住んでいました。

違うモデルを探すか、阿部さんが日本に戻るタイミングで撮影するか・・・。
迷いました。

するとふとしたとき、「モデルがバリにいるなら、バリに撮影に行ったらいいんじゃないか」という意見が出ました。
普通の商業出版であればまず浮かばない発想です。

しかし、もしバリの景色のいいところで撮影し、そのカバーが素晴らしいものになるのであれば、それほど非現実的な話ではないかなと思いました。
費用を調べたところ、飛行機とホテルは1人5万円程度。

良いスタジオを丸1日10万円で借りるよりも、むしろ安いのではないかということがわかりました。

こうして、急遽バリ撮影ツアーが決定しました。
描いたのは、「バリの海辺で手帳を開いて夢を考えている若い女性」。

その画を取るべくバリの海辺や日照時間などを調べた上で撮影計画を立てました。
撮影は10月末に二泊三日で向かうことになりました。バリの天候は非常に良好で、現地に詳しい阿部さんの案内もあり、無事に青空の下、最高の撮影本番を撮ることができました。

着いたビーチは、まさに絶景。
日本では見られないような透き通った青さに南の島の風。
岩場にのぼり、波の様子を見ながら撮影を開始しました。

暑い中モデルを引き受けてくれた阿部さんにも「是非、売れる本にしたい」という想いを伝えました。
空港から移動して昼食後、すぐの撮影だったわけですから心の準備もなかなか大変だったと思うんですけれども、どうにかご協力いただいて立派な写真が撮れました。

制作過程で人を巻き込む

プロハ夢手帳は商業出版ではなく、どちらかといえば仲間内でやるような同人規模の出版です。

この企画でわざわざパリまで行ったのか、という驚きは誰しも感じることだと思います。

そこに対して、驚きとか本気度っていうのは、必ず本で伝わると思っています。

実際バリに行ったことで、この本の箔がついたというか、話題性も高まったと思っています。
「夢をかなえる、海外に行く」という自己実現のイメージにも繋がると思いました。

こうした、知っている人をたくさん登場させるインタビューブックにおいては、企画自体にいろんな人を巻き込むのが鉄則だと思っています。

たくさん人を巻き込むことで、実際本ができた時や発売された時に、協力してくれる人が増えます。関わったものがあると愛着がわきます。人に紹介したくなったり自分でたくさん買ってみたりするかもしれないですから。
「私も関わったから、是非いろんな人に紹介したい」と思えるものです。

作る時点で人を巻き込む。
これはもう今どきの本作りとしては必須だなと思いました。

特に、こういうインタビューブックの場合、たくさんの人が出せるわけです。インタビューに出てくれた12人、コラムに出てくれた4人、あわせて16人がいるわけです。
ここにライターや関連スタッフもいるわけですから、そこに対して、単なる自分の仕事としてではなく、人を巻き込むためにどれだけ人に頼れるか。それが今回の一つのテーマだったと思います。

実験的な無料公開

発売前後にできるだけたくさんの人を巻き込もうということで、制作途中からシェアしてもらい、完成直後から発売日までの間に本文のページをどんどん無料公開して、その画像をFacebookで貼り付けられるようにしました。

無料公開を発売前にやることは非常に勇気がいることです。
それをあえてやることで中身も分かるし、自分が載っているページが無料公開されることで、関わった人が「自分も関わった」ということが言いやすくなるわけです。

単にカバー画像だけを渡して「何月何日にでます、協力ありがとうございました」では誰もシェアしてくれませんから、内容をシェアOKにすることは必須かもしれません。

実際、シェアしてくれたからすぐに反応が生まれて、販売ページの反応も上々でした。やはり、巻き込んで発売前に露出を増やす、そのためには一部無料公開も厭わないことが大事だと思いました。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「プロハ夢手帖」は部数が多く、できるだけたくさんの人に読んでもらうべき本だと思っています。

私もできる限りいろんな場所で、この本についてのいろんな話をしていきたいと思います。
また今回学んだ本づくりの工程は、ほかの本作りのアイデアにもつながります。

僕自身もこの本によって成長しました。学べたことを、今後の本作りに活かしていきたいと思います。

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