こんにちは、編集者のはやのん(@hayanon880)です。
今回は、会社員が本を書きたいと思ったら最初に考えることをまとめてみます。
会社員が、自分の経験やノウハウを本にまとめたいと考えることは必然的なことです。
現在は日々情報がアップデートされますし、働き方や日々の仕事のツールも変化しつづけています。
業界ごとのイノベーションによって、会社員が自らの業界について本を発信することのニーズが高まることもあるかもしれません。
ブログと比べると本は、一定の分量でかしこまった印象を与えることができます。
本を出すことで講演会のオファーがきたり、ウェブメディアの取材がきたりします。同業者からも注目されるかもしれません。
ただ、だからといって誰でも本を書けばよいものではないのです。
本を書く前にある程度考えておくことがあります。今回は会社員のあなたが本を書きたいと思ったら最初に考えることをまとめます。
本を書くために必要な正当性はあるか?
一つ目が、本を書くために必要な正当性はあるかということです。
「正当性ってなんだ?」と思うかもしれませんが、実は同じ内容の本であっても、内容とか熱い思いのほかに、より大切なことがあります。
内容や熱意よりも大切な「誰が書くか」
それが「誰が書くか」ということです。
例えば実績もあって知名度もある社長が書くのと、実績も知名度もない平社員が書くのとでは同じ内容の本であっても全く説得力が違うわけです。
これが自分の経験だったら絶対正しいんですが、仕事のコツとかノウハウとかだったら、正しいかどうかはやっぱり初見の人には分からない。
その正しさを担保するのが結局、誰が書いたかというその正当性だと思います。
この人が書いてるから正しいだろうとか、この人が言うんだから間違いないだろうというところの正当性が、本の説得力を増してくれます。
内容とか熱意以前に「誰がどの視点から書いているか」、また「その人にはどんな経歴とどんな実績があるのか」を伝えないと、本は成立しないんです。
立場と経験に正当性があるなら執筆をスタートするべし
一方で逆に言えば、自分がそんなに面白いこと書けない、面白い文章が書けないよと思っていても、立場と経験に正当性があるなら本をかけるチャンスが十分あると思います。
例えば、すごく特殊な分野を限定して弁護士をやっています、とか。
会社の倒産だけを扱っている弁護士です、とか。
あと例えば、ベンチャーの創立10年以内の企業だけを対象にしている会計事務所とか。
このように、自分の仕事の中でも立場とか経験に正当性があるとか、一定のジャンルを絞ることで面白い話が書けるというのであれば、文章力や面白い話に自信がなくても、考える価値はあるでしょう。
「立場と経験に正当性があること」が、本を書くための第一条件だと思います。
執筆前に、本全体の内容構成を考えられるか?
いきなりワードを叩くのは最悪の一手
二つ目は、執筆前に本全体の内容構成を考えられるかということです。
いきなりWordを開いて1文目から書くのが最悪な一手です。これは絶対にやめてください。
最初にWordを開いたなら、やることはまず、本全体の内容構成を考えていくこと。
これはプロでもアマチュアでも鉄則のルールで、実は「本の目次構成案を完成させること」がほぼ本の執筆の大半を占めていると言っても過言でないと思います。
第1章から例えば第5章まで作るとしても、第1章から第5章までどんな話を書いていくか、その章にあったテーマを生み出して一個一個考えていく。
大見出しはだいたい30~40個だと思いますが、その大見出しに入れることができる内容が自分の中で用意できるのか。
例えば各章6本ずつだったら、ちゃんと大見出しを6本ずつ用意できるかというところを考えなきゃいけないんです。
これがもし、最初から書き始めていたらどうなるでしょうか。
全体の見出しを整えずに見切り発車してしまうと、特定の章、特定の角度について自分が全く書けないことがわからないままスタートしてしまうので、途中で止まってしまう事がよく起こってしまいます。
これを防ぐためにも、必ず最初に本全体の内容構成をまとめて、最初から最後まで書けるという確証を持った上で書いていくのが大事だと思います。
章と大見出しをそれぞれ揃えるネタ出しから
章と大見出しをそれぞれ揃えるのを“ネタ出し”と呼んでいます。
本づくりにおいては、このネタ出しをじっくりやることが大切です。
これは実際の本の執筆と同じくらい時間をかけてもよいと思います。
似たような本を読んだりとか、自分が日頃接している中で出てきたお客様からの質問だったりとか、自分のもともと持ってた疑問だったりというところを一個一個書き出しながら、何が大見出しになって何が小見出しになるかを考えていく必要があります。
また、一度原稿全体を書いてみたなら、市販されてる他の人の本と比べてみて、自分の見出しと何が違うのかを考えてみることも大事だと思います。
執筆前に本全体の内容構成を考えておくことで、確実な本の執筆が可能になるし、本の内容としても充実した内容になると思います。
本は最低でも160ページぐらいは必要ですし、平均で292ページ、多くて256ページが相場ですが、これらをいきなり書き始めて一晩で書き終わる人はいません。
やっぱり何ヶ月もかかるし、一気に書きあげようと思ってもなかなかネタが続くものでもないんです。
「自分の構成案を睨みながら膨らましていく」というイメージを何ヶ月も保った上で、やっと執筆をスタートしていく。これが大事です。
その本に「読み手」はいるか?
最後にその本に読み手はいるかという視点です。
今、オンデマンド出版とか電子書籍とかで本自体は簡単に書けるようになりました。
その点、出版社から声がかからなくても本が出せる。
そういった意味でこのブログを見てくれた人もいると思いますが、簡単に書けるからこそ忘れがちなことがあります。
簡単に書けるからこそ忘れがちな読者の存在
それは本を出した先、配信した先には必ず「読み手」がいますよ、ということです。
読み手は大抵お金を払って読んでくれてるわけですから、そのお金頂いた分に対しては正当な価値を提供しないといけない。
自分の独りよがりとか、書きたいから書いたというものでお金をいただくことはなかなか難しい。
読者に対して必ず役に立つこと、問題を解決することを約束しなければいけない。
それは別に一つでもいい、本全体が100パーセント役に立つ必要はないんですが、「読者に対してどんな悩みを解決できるのか」を念頭において、下書きをしていく必要があると思います。
その本を読むと読者がどうなれるのかを書き出そう
読者のメリットを考えるならば、その本を読むと読者がどうなれるのか、これを書き出していくことが必要です。
これは企画書でまとめて作ることで、編集者やデザイナーに対しても共有することができます。この企画書の書き方については別の記事でまとめていきますので、そちらも一読ください。