社会人、特に若手ビジネスパーソンにとって必要な「記憶力」とは一体どんなことでしょうか。
例えば高校3年生であれば、目前に控えた大学受験のために、歴史の年号や古文の単語などを一生懸命覚えなければいけませんから、記憶力が必要というイメージは得やすいいかと思います。
いっぽう、社会人になると、昇進試験や専門の技能試験がある場合を除き、全員が受けなければならない試験のようなものがまったくない、という人もいるでしょう。
試験がないビジネスマンが記憶力を問われる場面とは?
営業マンが記憶力を問われるシーン
例えばあなたが営業マンであれば、以下のようなシーンで記憶力が必要になります。
・いつも取引している相手の名前や部署、これまでの取引関係を覚える
これは最低限のレベルだと思います。
・相手が好きなスポーツチームや行きつけの飲食店を覚えている
このレベルになると、相手と話すときに共通の話題が生まれやすいため、向こうからも覚えてもらいやすくなります。特に相手と年代が違う場合は、共通の話題があるだけで話も弾みます。
クリエイターが記憶力を問われるシーン
では、営業マン以外でどうでしょうか。
例えばあなたが制作・クリエイター系の仕事であれば、仕事で使う資料やソフトウェアの専門的な機能について、必要な時にいつでも取り出せることが必要ですが、一年に一回程度、もしくはそれよりも頻度が少ない場合、 「あれどこにあったっけ?」と思い出せずに仕事がストップしてしまうことがあります。
そのため、
・必要な時に必要な資料やデータを取り出すことができる
これが最低限のレベルだと思います。また、
・自分の持っているスキルや資料ではどうしようもできない場合に、誰に聞けばそれを用意できるかが、瞬時にわかる
このレベルになっていれば、大抵の物事を解決することができます。
語学を覚えるタイミングは社会人になってなんども訪れる
それ以外では、社会人になってもより記憶力が求められる職種として、英語や中国語など外国語を使った仕事が挙げられるでしょう。
英語は常に磨き続けなければ忘れていくものですし、学生時代とは異なり仕事でよく使う英語はまた別のものになるため、日々を覚え続けなければいけません。
高校時代と異なり記憶力は年齢をとるにつれて少しずつ鈍化していきますから、「社会人になってから物覚えが悪くなったなあ」と感じている人もいるかもしれません。
高校時代は体力もあり、また周囲も同じような教材で同じように勉強していたため、周りに流されていればある程度勉強して覚える習慣があったかもしれませんが、社会人になるとそもそも勉強する習慣もないところから何か覚えなければならないというシーンに直面します。
いわば、高校生のころよりも、社会人になってからのほうが、「物事を効率的に覚えるにはどうしたらいいか」を意識的に考えなければいけないのです。
記憶力を高める方法を本で学ぶ
ビジネス書に記憶力を高める方法が定番として並んでいるのは、こうした背景があります。
社会人になると、受験勉強だけをしているわけにはいきませんから、限られた時間で最大限の成果を出すために、「物事をうまく記憶する方法」を身につけなくてはいけません。
高校時代に記憶術の基礎や、語呂合わせなどでうまい覚え方を身につけている人は社会人になっても そのやり方を応用することができますが、高校時代にそうした経験がなく、付け焼き刃で覚えてきた人は、社会人になってからその術を身につけるしかありません。
こうした場合に、社会人やビジネスパーソン向けの記憶術・記憶法の本を手に取り、そこに書かれた記憶の方法を知るタイミングがくるのです。
記憶力が最強のビジネススキルである
まずはこちら。記憶術というと大学受験や資格試験など特定の分野を攻略するためのものというイメージがあるかもしれませんが、この本は意識的に一般のビジネスシーンにおける記憶術とは何かを整理したうえで、記憶術という技術そのものの位置付けを教えてくれます。
僕としては、記憶術を高めたいと思った若手ビジネスパーソンには、この本を最初に読んでほしいと思います。
なぜなら、他の本だと導入はそこそこで技術にいきがちですが、「その方法を何に役立てるのか?」の視点が欠けては無意味だからです。
最初に、人間はその人がもつ固有の記憶によって世界の見え方や考え方、情報の検索の仕方が変わるということを説明してくれます。すこし哲学のようですが、僕もそのとおりだと思いますし、「知らないことは検索すればいいじゃん」と言う人の視野が狭いことは実感としてもあります。
本一冊通して「なぜ、記憶が大事なのか?」という導入・動機付けが続きます。各項目につけられた見出しにも注目してみましょう。
著者の宇都宮さんの本が気に入ったら、実際のトレーニング用に宇都宮さんの別の著作も見てみてください。
覚えない記憶術
続いては実際に記憶力を鍛えて実践するために、こちらの本はどうでしょうか。もともとは『読んだら忘れない読書術』という本のヒットを受けて作られた姉妹本のような位置付けですが、こちらは冒頭からこれでもかというくらい具体的なトレーニングが紹介されます。
実践することまでを考えると非常にボリューミーですが、本書に載っているすべてのものを実践するというよりは、仕事をしている中で記憶力を鍛えたい場面に出くわしたときにはじめてどのトレーニングをやるか探すような使い方がよいでしょう。
◇ ◇ ◇ ◇
なんども強調しますが、ビジネスマンの仕事における記憶術は、どんな場面で何のために使うのかという目的意識が必須です。むやみやたらに覚える受験生とは異なることを意識しながら、記憶力を鍛えていってください。