名刺交換をどう考えるべきか
社会人になると、名刺が自分の分身のように思えてくることがあります。
特に日本人は名刺を大切にする文化があるらしく、新人研修でも名刺の交換と扱い方から真っ先に学んだという人も多いと思います。
最初は面白さもあって、集めた名刺はできるだけ大切にしていると思います。名刺フォルダーに1枚1枚入れて、「これはあの時に話した人」「この人は面白そうな仕事をしていたなあ」と眺めたこともあるかもしれません。
僕自身は大学4年生で出版社に内定したあとの10月から、出版社入社予定者としてさまざまな出版イベントに顔を出していたこともあり、必然的に名刺が増えていきました。
小さい名刺フォルダーがすぐにいっぱいになったのを見て、これからの社会人生活のイメージを描いていた記憶があります。
「社会人になってからも、自分の会社以外の人ともたくさん会って名刺交換して、広い視野を持とう」などと思っていました。
名刺交換の99パーセントは無意味
若いうちから社外の人と交流の機会を持つことで、自分の見識を広げてキャリアアップを実現することは大事なことです。
実際に僕が出版社をやめてフリーランスになったのも、同僚や同期ではなく、自分のイベントで知り合った同世代社長たちの影響が大きいのですから、結果的に交流がキャリアアップになったことは間違いないと思います。
また、独立起業してからも当時のつながりが生きていますから、人と会っていてよかったなとしみじみ実感しています。
しかし、人脈を増やすことと名刺を増やすことはイコールではありません。
名刺は人脈にはならない
何より僕自身でも勘違いだったのが、名刺はいくら集めても意味のある人脈にはならないということでした。「100枚集めれば1枚くらい・・・」といった確率の問題ではありません。
意味のない名刺を集めたところで次にはつながりませんし、相手も同様です。独立1年目の名刺をスキャンして保存してみましたが、結局スキャンしただけで使った覚えはありません。
名刺は量が問題なのではなく、交換の仕方の丁寧さが足りないのでもありません。
会社の名刺には情報量が少なすぎる
そもそも多くの人と一度に名刺交換をするわけですから全員について覚えていることはできません。
名刺に書いてある情報が大きい企業で、部署名も一般的なものだとすると、覚えてもらう可能性は限りなくゼロです。
「NTTなんとかの情報なんとか部の名刺、どんな人からもらったんだっけ?」とか、
「この名刺、リクルート系の企業だってことはわかるけど、なんの人だっけ?」
ということが幾度となくありました。
会った瞬間に次が見える人であれば名刺の意味がある
仮に次につながる名刺交換があるとするならば、つながったときの第一印象=直感だけが大切です。
「この人とはすぐに仕事の相談ができそうだな」
「この人が持っているものは僕の足りないピースを埋めてくれるな」
など、一緒に仕事をしているイメージが生まれ、なんなら今すぐにでも相談したいような人だけが残ります。
逆に、「役に立つかわからないけどとりあえず保存しておこう」という考え方はNGです。
数年以内に使うことはないでしょうし、5年後くらいに仕事にいろいろと変化があってから思い出したとしても、その頃には相手も同じように変化しています。名刺のアドレスを頼りに連絡したところで無意味になるでしょう(退職して連絡が取れない可能性もあります)。
自分専用の名刺を別につくる
個人どうしの繋がりを作るために必要なこと
会社以外の個人活動で個人間の繋がりを作るために必要なことは、自分用の名刺とキャッチコピーをつくり、自分がどんな人間なのかを一言で覚えてもらうことです。
・ファッションに詳しいブロガー
・地域活性化の二拠点居住
・第二新卒の転職にひたすら詳しい人
・特殊なシェアハウスの専門家
などなど、短いものであれば覚えてもらえます。そこに会社名は関係ありません。
名刺交換で意味のある繋がりを残したいのであれば、個人活動専用の名刺をつくることが必要になってきます。
本業の会社の名前や電話番号、メールアドレスは一切記載せず、フリーランスになったつもりでつくってみるのです。
・個人の携帯電話
・個人のアドレス(Gmailなど)
・Facebook
・資格
・特技
・つくってきた作品の写真
・つくってきたサービスの名前やウェブサイト
・顔写真
などです。
個人名刺は覚えてもらう必要はないため、あまりおしゃれである必要はなく、覚えてもらうことが大切ですから、小さいサイズのなかに文字と写真の情報をつめこみます。
顔写真に自信がなければ、ココナラで似顔絵を描いてもらってもいいかもしれません。
人脈や名刺交換の考え方がわかる本
ここからは、会社員として成長していくために個人の名刺をどのように考えればいいのかについて書かれた本を紹介していきます。
人生が変わる2枚目の名刺
本のタイトルになっている「2枚目の名刺」というのは、2種類目の名刺ということです。
本業の名刺に加えて、個人活動の名刺をあわせてつくることで、本業との相乗効果を出そうという考え方です。
その名も「NPO法人 二枚目の名刺」という団体があり、数年にわたって精力的に活動されているので、都心部などでビジネス関連のイベントに参加していると一度は耳にする機会があるかもしれません。
本書でも実際に活躍する人のインタビューで最初にNPO法人の代表のインタビューが掲載されています。
本書では大手テレビ局で働きながら個人でもイベントを主催している著者が、豊富な実例をもとに2枚目の名刺をつくることのススメを説いてくれます。
本書のハイライトは第2章。ヒントと書かれていますが実際のノウハウはここにあります。
実際に会社員の立場から自分のやりたいことを考えて書き出し、そこに嘘がないかを精査しながらやりたいことを整理して形にしていくステップが書かれています。
同じようにやりたいことを見つけた人の前例が多いため、具体例に基づいたやり方が書かれていると思います。
また、個人でやりたいことと本業との共通点をできるだけ見つけることで相乗効果をたかめることの大事さが強調されています。
そのため一般的な「副業」とは大きく異なるといえるでしょう。
第1章の導入がちょっと長いので、先に第2章から読み始めてもいいかもしれません(第2章の本論と最後のインタビューだけ読んでも十分価値があります)。
さて、2枚目の名刺をつくることは、会社を離れた個人としても何ができるかを相手に伝えることができるようになることを意味します。「自分を一言で表すと何者なのか」「自分は個人で何ができるのか」、それを簡潔に伝えられるようになるのです。
ここまでやってようやく、 会社員が意味のある名刺交換をできるようになるといえるでしょう。