僕が出版コンサルティングでやっていること

編集

出版コンサルティングとは

こんにちは、編集者のはやのん(@hayanon880)です。

今回は僕の本業のひとつである出版コンサルティングにおいて僕がどのような考え方をしているのかについて話していきます。

出版コンサルティングとは、主に出版社の社員じゃない人フリーランスの編集プロデューサー、出版プロデューサー、あとは僕みたいな編集者が、本を出したい人に対してどうやったら出版社で本が出せるか、また出版社以外で本を出す方法には何があるかを知って、自分の出版戦略を考えていくために知識と経験がある出版のプロに相談することを指します。

出版コンサルティングは値段が高く、なかなか気軽にはいけないものです。

基本的に専門知識がある人と短時間で喋るので非常に集中力のいる作業です。

コンサルティング費用が1冊成約で30万円するものもあれば、1時間で1~2万円という高額なものもあります。

◎本を書きたい人、ブログを本にしたい人向けの内容をまとめました↑↑

原稿を⾒るのは最後の最後

出版コンサルティングを受けたい人が最初に考えることは、おそらく「原稿を持って行かなきゃ!」だと思います。

しかし、実は原稿を見るのは最後の最後なんですよね。

原稿というのは、本のいわば中身ですから、一番大事だと思いますよね。

しかし!実は本文については本の企画全体のなかでいえば細かい部分で、枝葉末節でいうと最後の「葉」なんですよね。

つまり、もっと大事な幹や枝の部分が、本づくりにおいては存在するということです。

逆に言うと、幹や枝があれば葉は最後の最後でいいし、なんなら葉っぱはほどほどの内容で構わないと考えるのが編集者の役割なんですよね。

では、その幹や枝は何を指すのでしょうか。

実際出版コンサルティングを受けたいとか本を出したいと考える人は、自分の好きな物を自由に書いてそれで売れると思ってる人が多いんですね。でも残念ながら、それは甘いと思うんですよね。

本を出すということは、世の中にいる何百人・何千人の読者に対して、お金を払って読んでもらうわけです。その人の貴重な1時間〜2時間をもらうわけです。
買った本を置いておくスペースもつかいます。

いわば相手のいろんな物をもらうわけですから、お客さんである読者を何より考えなくてはいけません。

ところが、最初に原稿を作っちゃうと、原稿に熱中するあまり、読者をないがしろにしがちなんですね。

いきなり原稿から書いちゃった人はそういった視点が大きく欠けているケースが多いんです。
「え、これ誰が読むんだ!?」
っていう文章をいきなり持ってきて「面白いと思うので出せませんかね」っていう人、多いんです。

編集者はその点、対応に慣れているため、冷静に対処します。

最初、いきなり原稿を読みこんだりはしないです。

1枚の企画書をつくれるか、それだけ

経験豊富な編集者は、本文を最初に読み込む代わりに、最初に1枚の企画書を作ることを大事にします。

企画書というのは A4で企画の本のタイトルから内容紹介、著者のプロフィール、本のサイズ、印刷の方式、発売日、本の値段そして何より本の売りと読者対象、読者に対して何をもたらすかというものをまとめたものです。

読者に対して何をもたらすかというのは、薬で言うところの効能ですよね。この効能をはっきり一枚に簡潔にまとめたものを企画書とします。

企画書が作れれば、本の幹と枝が決まってくるわけで、逆に言うと企画書が作れないものは本として成り立たないです。

一枚の企画書を作れるか。

それだけが出版コンサルティングで最も重要視するべきポイントだと思います。

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◎本についてはこちらでまとめています↑↑

ビジネス書の場合はとにかく競合分析とマーケットサイズ

実際に本出したい人は大きく分けてビジネス書実用書といったノンフィクションと、小説詩集と言ったフィクションの2種類があると思うんですね。

まずビジネス書の場合についてお話ししていきます。ビジネス書の場合はとにかく競合分析とマーケットサイズが大事だと思うんですよね。

ビジネス書の競合分析とは

まずビジネス書における競合分析について言うと、
①これまで同じようなジャンルでどういった本が売れているか、また
②どういった著者が活躍しているか、また
③どんなものが定番かとなっているか
を考える。これが競合分析です。

出版社から出される本は書店に並ぶんですが、書店はジャンルによって売り場が決まっているので、必ずライバルと同居するというのが前提になってるわけです。

これがユニークなところで、いわば「ライバルの存在を知らなければ戦うことができない」というのが本づくりの基本です。類書という言い方をするんですが、近い本を知らないまま企画書を書いたりすることはありません。

マーケットサイズとは

⼗分なマーケットがあれば企画は成り⽴つ

もう一つがマーケットサイズです。これはそもそもテーマにしてるジャンルによって、買いたい人がどれぐらいいるかが決まっている、という意味です。

マーケットサイズが一番大きいジャンルはダイエット、英語、恋愛などのコンプレックス産業に通じる大衆的な分野です。これらは世の中の老若男女あらゆる人が読む可能性があり、ヒットすれば大ヒットする可能性が高いです。

逆にどんなに面白くてもマーケットサイズがなければ面白くても売れないわけです。

例えば就活生向けの本、大学1年生に向けた本、あとは例えば僕みたいな特殊なフリーランスに向けた本。それらは絶対的な人口がいないので、いくら面白い本を作ってもなかなか売れないということが起こってきます。

ここが注意点で、若い人でよくいるのが、自分の特殊な経験をもとに本にしがちなんですね。

例えばマイナーな国に行った旅行記などですが、マーケットがないと本として成り立たないため、企画として成立しないということが起こってきます。「世の中に同じテーマの本がないから書きたい!」となるのですが、読者がいないから本がないわけです。

創作・⼩説の場合はファン育成

⼩説を書きたい⼈がやるべきことは連載だ

次に創作や小説の場合です。

創作小説の場合はファン育成が何より大事になります。

そのために小説を書きたい人がやるべきことは、いきなり部屋にこもって200ページの原稿を完成させるのではなくて、まずはどこかのメディアで連載することです。

現在はウェブで連載することができますから、オンライン連載プラットホームを使うことで、自分のまず基本的なファン層とファンからの反響を分類してことが大事になります。

投稿プラットフォームを分析する

小説の投稿プラットホームはいくつかあるので別のエントリーにまとめますが、投稿プラットフォームであるカクヨムやエブリスタなどを分類することで、自分の小説のジャンルの大きさやどんな作品を求められているかを、なんとなく掴むことができます。

創作活動はあくまで読者があってこそのものなので、初心者で活動してる場合まず自分のジャンルがどれぐらいの立ち位置にあるのか、小説全体の中で自分の書きたい細いジャンルがどういう位置づけにあるのかを知った上で、攻めていくことが必要になると思います。

突発的な創作衝動に従うことと同じくらいクールにいる

小説は特に書きたいと思って突発的に書き上げることが多いと思うんですね。これは創作の初期衝動のようなもので、このまま衝動はもちろん大事にするべきものなんですが、一方で衝動だけでやってしまうと「誰もいないところに誰も読まない本を作ってしまう」ということになりかねません。

突発的な創作衝動に従うのと同じぐらい、クールなマーケティング視点で、自分の本はどれぐらいの人がどれくらい読むんだろうということを考えて作っていくことが必要になります。

それは経験がないと難しいですから、それを一緒に考えていくのが出版コンサルティングの役割になります。

⼩さい「反応」を得ることで、作家は成⻑していく

逆に言うと、小さい反応を投稿プラットフォームやブログなどで得ることができるようになった時代なので、作家は成長しやすくなったんじゃないかと思っています。

いきなり自分の本を大々的に発表するというよりも、少しずつ公開しながら世の中の反応を見て修正していく、修正を厭わないことが大事です。

修正した結果ファンもできてくるし、よりマーケティング視点を反映したものができている、その上で出版を考えていくことが必要になってきます。

そのために出版コンサルティングも、オンラインで一部公開したり順次連載していくことで反応を見ていくとといった、ある種ウェブマーケティング的な手法が主流になってくるのではないかと思っています。

今後もこのブログでもそういった本の開発手法についても研究していきたいと思っています。